「やぁ、今年も来たよ。」
まだ満開ではないものの、しっかりとお前たちは咲いていた。
東京・駒込の染井霊園。
霊園と言えども、ソメイヨシノ発祥の地として伝えられ桜の花を知る人にとっては聖地である。
故人達が眠る地においても、ここの桜は狂おしく咲き乱れる。
静寂が支配するこの地に、私は腰を下ろして故人に遠慮気味に挨拶をしながら堪能する。
やはり良い。
私の今までの嫌な事が、まるで嘘のように洗われていく。
女々しいが、思わずジーンときて涙が溢れてくる。
語りかける何かがあるのだろう。
堪能して、静かに立ち去る。
「今年も綺麗だったよ。来年もまた綺麗なお前を見せてくれよ。」